昨年のラグビーのワールドカップの時に、「おもてなし」が、世界中から賞賛を受けました。
ふと、「おもてなし」と「サービス」の違いは何だろう、と思いました。
「おもてなし」と「サービス」の違いは、何かを書こうと思います。
そもそも「おもてなし」という言葉の意味とは
「おもてなし」の意味をお伝えします。
「もてなし」という言葉に丁寧語の「お」を付けた言葉が「おもてなし」です。
「もてなし」の語源は、「モノを持って成し遂げる」という意味です。
お客様に対する「扱い」「待遇」という意味もあります。
もてなしの語源の中の「モノ」とは、目に見えない「コト」と目に見える「モノ」があると言われています。
「おもてなし」のもう一つの語源は、「表裏なし」です。
表裏のない「心」でお客様をお迎えするのが「おもてなし」なのです。
「おもてなし」の語源は、どこなの
平安時代、室町時代に生まれた『茶の湯』の文化から「おもてなし」は発展したと言われているようです。
『茶の湯』とは、「ただ湯をわかし茶を点てて、のむばかりなることと知るべし」と千利休が言ったそうです。お茶を振る舞う亭主と招かれたお客とが心を通い合わせた状態の一期一会のことです。一期は一生、一会は一度の出会いです。
『茶の湯』で求められるのは、季節感のある生花、お客様に合わせた掛け軸、絵、茶器、匂いなどの具体的に体に感じ、目に見えるものを「モノ」と言い、瞬時に消えてしまう言葉、表情、仕草など、目に見えない心を「コト」と言います。
茶道の世界で最も有名な千利休が「利休七則」に“おもてなしの7ヵ条”をまとめています。
利休七則の一部をご紹介します。
「降らずとも傘の用意」=不慮の事態に備えましょう、ということ。
「夏は涼しく冬暖かに」=エアコンのない時代のため、夏は打ち水をして、冬は温かいお菓子を出して、季節感を演出しながらもお客様が心地よく過ごせるよう工夫していました。
「茶は服のよきように点て」=「茶」とは抹茶。「服」とは飲むこと。飲む人にとってちょうど良くなるように点てなさいとなります。
「相客に心せよ」=同じ席にいるお客様同士を思いやりましょう。全員が気持ちよく過ごせるように、主催者である亭主は気を最大限に配るということ。
など、お客様をお迎えする時の心構えです。
これがまさに、日本人が守り続けてきた伝統的な「おもてなし」という心なのです。
「サービス」とは、何でしょうか
「サービス」は、奉仕する、仕えるという意味で、英語では「service」です。
語源は、ラテン語 の「servitus」(セルヴィタス)からきており、元々の意味は「奴隷」です。
サービスとは「奴隷」の意味通り、サービスを受ける「お客様が主」であり、
お客様に対して接客し、「サービスを提供する側が従」となります。
主と従の関係がはっきりさせるのが「サービス」です。
そして、「サービス」というものには、対価が必ず発生します。
サービスとは、すべての人に「いつでも、どこでも、誰にでも」という考え方です。
「ホスピタリティ(Hospitality)」は、「サービス」より一歩進んだ考え方です。
語源は、ラテン語の「Hospics」(客人等の保護)で、「Hospics」から出来た「Hospitality」は「歓待」の意味があります。英語では、次のような言葉に変化していってます。「Hospital」(病院)、「Hotel」(ホテル)、「Hospice」(ホスピス)などです。
個別に「この時、この場、この人だけに」「おもてなし」をするのが「ホスピタリティ(Hospitality)」です。
もてなす側(ホスト)と、もてなされる側(ゲスト)の関係が「サービス」のように主従関係でなく対等がなのが「ホスピタリティ」です。
お客様=病院なら患者様、動物病院なら飼い主様と動物です。お客様に対して思いやりの心を持って「個別の」サービスを提供するのが「ホスピタリティ」です。「対価に関係なく行動する自発的なもの」です。
この「ホスピタリティ」に近い日本語は、何でしょう。
「おもてなし」なのかと一瞬思いましたが、ちょっと違うようです。
答えは、「接遇」です。
接遇とは「業務上のお客様に対するサービス」の言葉です。遇するとは「もてなす」という意味です。単純な接客から一歩踏み込み、お客様に寄り添い、態度、言葉遣い、表情、心地よい空間や時間を提供する、業務上でのお客様へのサービスのことです。
「接遇」とは、「一人一人のお客様の目線に合わせて、お客様の心理に寄り添った表情や態度でサービスを提供する接客技術」を意味しています。
「おもてなしの心」は日本がを守り続けてきた伝統的精神です。是非、学んでいきたいですね。
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